あたたかく、そして時に切ないメロディーと、心にそっと寄り添うような歌詞。
男女デュオ「ハンバートハンバート」の音楽は、まるで私たちの日常そのものを歌っているかのように、自然体で心に響きます。
その魅力の源泉は、メンバーである佐藤良成さんと佐野遊穂さんが、音楽のパートナーであると同時に、実生活でも夫婦であることと無関係ではないでしょう。
ステージ上で交わされる二人の軽妙なやりとり、そして生活の中から生まれてくる数々の楽曲たち。
それらは、二人が夫婦として、そして音楽家として、いかに深く、そしてユニークな絆で結ばれているかを物語っています。
この記事では、ハンバートハンバートの音楽と活動の裏側にある、思わず心が温かくなるような夫婦の絆を感じるエピソードの数々をご紹介します。
二人の何気ない日常から生まれる音楽の秘密、そしてお互いへの深い理解と愛情が垣間見える瞬間を、一緒に覗いてみませんか。
この記事を読むとわかること
- ハンバートハンバートの二人の出会いからデュオ結成までの意外な道のり
- 「作詞作曲担当」と「味見係」というユニークな音楽制作の裏側
- まるで夫婦の日常会話?なごやかで面白いと評判のライブMCの魅力
- 三人の子育てと音楽活動を両立させる、二人ならではの夫婦のルールや価値観
音楽と人生のパートナーシップ:ハンバートハンバートの成り立ち
偶然の出会いからデュオ結成へ
ハンバートハンバートの物語は、二人が大学時代に出会ったことから始まります。
もともと佐藤良成さんが組んでいたバンドは6人編成で、当初はデュオとして活動する予定は全くありませんでした。
華やかなバンドを目指していた佐藤さんは、女性コーラスを入れようと考え、友人の紹介で佐野遊穂さんと出会います。
ベーシストが「遊穂とカラオケに行ったら、すごく歌がうまかった」と推薦したのがきっかけでした。
遊穂の歌声がメインになるまで
当初はコーラスの一人として加入した佐野さんでしたが、スタジオで練習を重ねるうちに、周囲から「良成が歌うより遊穂が歌った方がいいんじゃないか」という声が上がるようになります。
そこから徐々に佐野さんがメインで歌う曲が増え、気づけばボーカルのバランスが逆転していました。
やがて他のメンバーが就職活動などでバンドを離れ、自然な形で佐藤さんと佐野さんの二人組デュオとなったのです。
それは、意図して作られた形ではなく、お互いの才能が引き寄せ合った、運命的な結成物語でした。
「生活の延長線上にある音楽」:二人三脚の創作活動
役割分担は「作る係」と「味見係」
ハンバートハンバートの楽曲制作における役割分担は非常にユニークです。
作詞作曲はすべて佐藤良成さんが担当。
そして、その出来上がった曲を最終的にジャッジするのが佐野遊穂さんの役目です。
佐野さんは自身の役割を「作ってない係」「味見係」、時には「ゆるキャラ係」と表現しています。
佐藤さんが生み出したメロディーと歌詞に対し、佐野さんが「ここはこうした方がいいんじゃないか」と意見をすることもあれば、「うん、これでいいね」とそのまま完成することもあると言います。
メロディーができてから歌詞がつくまで、15年もの歳月がかかった曲もあるというから驚きです。
生活を共にし、お互いの感覚を深く理解している二人だからこそ成り立つ、絶妙なバランスの共同作業なのです。
夫婦だからこその「喧嘩しない」制作スタイル
「仕事でも家庭でも一緒で喧嘩にならないんですか?
」とよく聞かれるという二人。
しかし、いつも一緒にいるからこそ、お互いのスケジュールや状況が手に取るようにわかるため、「今は喧嘩している場合じゃない」ということが自然と理解できるのだそうです。
制作に行き詰まったり、意見がぶつかったりすることがあっても、協力しなければ仕事もライブも成り立たないことを知っています。
相手が大変そうな時に無理な要求はせず、逆に何かをしてくれたら素直に感謝する。
それは20年以上の歳月をかけて築き上げてきた、まるで足に馴染んだ靴のような、心地よいパートナーシップの形なのです。
ステージは二人のリビング?:名物ライブMCの魅力
まるで日常会話そのもの
ハンバートハンバートのライブの大きな魅力の一つが、楽曲の合間に繰り広げられるMC(トーク)です。
その内容は、音楽とは全く関係のない、二人の日常の出来事がほとんど。
佐野さんが習い始めたバレエ教室に個性的な新人が入ってきた話や、行きつけのファミリーレストラン「ガスト」の利便性についてなど、その話題は多岐にわたります。
佐野さんがとめどなく話し、それに佐藤さんが相槌を打ったり、的確なツッコミを入れたりする。
そのやりとりは、まるで夫婦の日常会話を隣で聞いているかのようで、会場はいつも温かい笑いに包まれます。
あまりに話が長くなり、照明が落とされてしまうこともあるほど。
その自然体で飾らない姿に、多くのファンが魅了されています。
トークだけでも作品に
この人気のMCは、ついにトークだけを収録したCD『THE LIVE MC』としてシリーズ化されるまでになりました。
楽曲が一切収録されていないにもかかわらず、ファンにとってはたまらない作品となっています。
二人の会話には、お互いへの信頼と愛情が自然ににじみ出ており、ハンバートハンバートというデュオの魅力をより深く理解することができるのです。
ステージの上でさえ、二人はごく自然な夫婦のままでいる。
それこそが、彼らの音楽が持つ普遍的な魅力の源泉なのかもしれません。
家族としての絆:三人の子育てと音楽
引用元:朝日新聞(デジタル版)https://www.asahi.com/
「土日はライブをしない」という決断
三人の男の子の親でもある佐藤さんと佐野さん。
夫婦デュオとして活動する中で、子育てとの両立は大きなテーマでした。
特に、ライブ活動は週末に集中しがちで、子どもの学校行事に参加できないことが増えていきました。
この状況に危機感を覚えた二人は、2019年に「1年間、土日はライブをしない」という異例の決断を発表します。
週末は家族で過ごす時間を最優先するというこの選択は、多くの共感を呼びました。
実際に子どもの運動会に参加できた時、喜ぶ子どもの姿を見て「実は寂しかったんだな」と実感したと語っています。
音楽家である前に、一人の親として、家族としての時間を何よりも大切にする。
その姿勢が、彼らの音楽にさらなる深みと説得力を与えています。
日常のすべてが歌になる
ハンバートハンバートの楽曲には、家族の情景が色濃く反映されています。
「がんばれ兄ちゃん」では、少し頼りないお兄ちゃんを誇りに思う弟の視点が描かれ、「ひかり」では言葉にならないコミュニケーションや家族の断絶と再生といった深いテーマにも向き合います。
子どもたちが家でドタバタと遊んでいる横で曲作りをすることもあるという二人。
まさに、日々の暮らしそのものが創作の源泉なのです。
喜びも、悲しみも、何気ない日常の断片も、すべてが彼らのフィルターを通すことで、多くの人の心を打つ「うた」へと昇華されていくのです。
この記事のまとめ
- ハンバートハンバートは、佐藤良成さんのバンドに佐野遊穂さんがコーラスとして加入したことから始まった。自然な流れでデュオという形に落ち着いた。
- 楽曲制作は佐藤さんが作詞作曲し、佐野さんが最終ジャッジをする「味見係」というユニークなスタイル。お互いの役割を尊重し、絶妙なバランスで成り立っている。
- ライブのMCは、二人の日常を切り取ったような自然体の会話が魅力。その面白さからトークだけを収録したCDも発売されている。
- 三人の子どもの親として、家族の時間を大切にするために「週末はライブをしない」と決断するなど、仕事と家庭のバランスを常に模索している。その生活感が音楽にも深く反映されている。
おわりに
ハンバートハンバートの音楽と二人の佇まいから感じられるのは、「こうあるべき」という力みのない、自然体の関係性です。
音楽のパートナーとしてお互いの才能を認め合い、夫婦として日々の生活を共有し、親として共に子育てに奮闘する。
そのすべてがシームレスにつながり、ハンバートハンバートという一つの表現になっています。
彼らのエピソードは、特別なものではなく、どこにでもある日常の延長線上にあります。
しかし、その何気ない日常の中にこそ、揺るぎない絆と愛情が隠されていることを、二人の音楽は教えてくれます。
これからもハンバートハンバートは、夫婦として、家族として、そして音楽家として、私たちの心に響く「生活のうた」を紡ぎ続けてくれることでしょう。
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